それじゃ、また

昨年の11月末、チャリが1台増えた。
ちょっと.. いや、35年前のヤツだから充分にクラシックかな。
ブリヂストン・ユーラシア・ディアゴナール。

買ったのではなく、借りたのです。元のオーナーはワタシに譲ったつもりらしいけど。

『体調壊して乗れないのに自転車を数台持ってても勿体ないからさ、KOZY、俺の代わりに乗ってよ。』  彼から久しぶりに受け取ったメールは、確かそんな文面だったと思う。

『うん、イイよ。喜んで引き受ける。』 ..と返信した。
雨降ってるし、仕事終わるの遅いし、天気が良い次の土日にでも... と思いながらやり取りしてたら、彼の文面からは少しでも早く手渡したそうな雰囲気。
『遅い時間でもOK、持って行くから!』
雨が強く降る平日の夜にも関わらず、彼はクルマにチャリを積んでやって来た。



引き取ったユーラシア(左) 右は同じメーカーのアンカー
両者(車)は25歳差なのでほぼ親子



彼は10歳上で、父親業でも3年ほど先輩。
子供同士が仲良し&お互いに自転車が好きと言う事もあって、あっという間に家族丸ごと一緒に遊ぶようになって17年来のつきあい。

いつ会っても、何をして遊んでも、彼の背中からは落着きと貫禄を感じてた。正直に言えば軽い敗北感、劣等感。それがバレるのを必死に隠してたけど。
その度に『ま、10歳下だからな。10年後に自分があんな感じになってりゃ負けじゃねーし』 ..なんて強がっていた思い出。だから、知り合って10年が経った頃、当時の彼をしょっちゅう思い出しながら、『やれてるだろ、負けてないだろー』 と妄想ひとり相撲。

ずっと父親像の参考にしてたその彼が長い旅へ出る事になった。出発前の挨拶を貰えなかったし、行き先も聞かされてないのがとても悔しい。自分に預けたのも含めた全てのチャリとクルマは自宅に置いたままなので、どうやら徒歩で出掛ける模様。

ただひとつ解ってるのは、10年以上も追い掛け続けたあの背中を追えなくなってしまったと言う事だけ。

『暖かくなったら体がきっとラクになるからさ、ちょっと漕ごうよ』 彼にそう言われた時、心に決めた。
このチャリは貰うのではなく、“その時”まで大事に預かっておこう ..と。

でも長い旅に出て行かれてしまった。
次に会えるのはいつなのか、見当もつかない。

『旅に出る直前で、最後にKOZYと会えたのは嬉しかったと思う』 と彼の奥さんが言ってくれた。
ふと考えてみる。
もし自分も全ての人に長い別れを告げなきゃいけないとしたら、家族以外で最後に会っておきたいのは間違いなく彼です。

これまで乗って来たどのチャリにも愛称なんてのは付けた事はなかったけど、初めてこの紅いチャリに彼の名前を付けて呼ぶ事にした。

彼がリサイクルショップで見つけたユーラシア。
小遣いをかき集めて引き取って来た当時はかなりくたびれてる状態だったらしいけど、手持ちのパーツを切った貼ったで見事に再生。
その再生劇の一部始終と取扱注意事項がわざわざ手書きでしたためられたメモをチャリと一緒に貰った。彼の肉筆と言うだけでも、宝物のひとつになってしまう。

このメモに手書きで返事を出したいのに
送り先が判らない



今日、家族に囲まれて静かに旅へ出た彼。通称イワさん。
『ほら預かってるチャリだよ、古いけど良く走るんだよコイツ』.. って見せたくて、沿道に立った。
イワさんを待ち続ける間、橋のたもとでずっと磨き続けてたけど、涙が止まらなくてキレイになったかどうかは良く判らなかった。
目の前を通り過ぎるイワさんへ向けてチャリを高く掲げたけど、彼から見えてたかどうかも良く判らなかった。


敬愛なるイワさんへ

今どこにいますか
今なにをしてるんですか

あなたは雨に濡れながら俺の腕をギュッとつかんで
『俺からのお願いだ。健康診断は絶対に欠かすな、
健康あっての人生なんだよ、本当に頼むからな!』
と最後に言いましたね

尊敬する先輩からのありがたい言葉と受け止め、
これからも健康を心がけながら暮らして行きます

俺からもお願いがあります
『やっぱあのチャリ返してくれないかな』
って言う連絡、いつまでもお待ちしております

長い間、本当にお疲れさまでした
それじゃ、また


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